「充分よい」は充分か

DVDの次世代規格と目されているものとして、Blu-ray DiscHD DVDがある。
ROMの場合、片面一層の容量は、Blu-ray Discでは23.3/25/27Gbytes、HD DVDでは15Gbytes。2層はその倍。最近、Blu-ray Disc側は「6層(150Gバイト)もありうる」と豪語したそうである。
かなり前の話であるが、この容量差について、HD DVD陣営は「HD DVDの容量はgood enoughだ」としたらしい。「good enough」は「充分よい」と訳される。
Blu-ray Discの映像フォーマットは古く、そのために25Gbytesの容量が必要である。しかし、HD DVDはもっと新しく効率のよい映像フォーマットを使う。したがって、15Gbytesで充分である。という。


それが事実であるとして。
「充分よい」というのは、作り手の言葉ではない。使う側の言葉である。
作り手が「充分よい」と言った場合、「これ以上できない」と言っているに等しい。「できない」とは、諦めたときに出る言葉である。
そのような諦めきった言葉を使う陣営が作ったモノは、できることをすべてやった結果ではないように感じる。なにしろ、Blu-ray Discの容量に追いつこうとすらしないのだ。


HD DVDの優位性は、映像フォーマットと、現行DVDとの高い製造互換性である。
映像フォーマットなど、サポートすることに決めてしまえば、技術的な課題など何もないので、たいしたアドバンテージではない。実際、Blu-ray Discそのアドバンテージを詰めてきたようである。
製造互換性が高ければ、移行コストが下がり、その結果、最終製品の価格も下がるだろう。しかしそれは、最初のうちだけで、普及してしまえばコストは下がる。DVDとCDの製造互換性は低いが、現在のDVDの価格は、物にもよるがCDよりも安い。消費者にとっては、新規格のプレイヤーでDVDやCDが再生できるという点が重要であり、そしてそれはBlu-ray DiscHD DVDも実現可能である。互換性とはその程度のものであろう。先のDVD規格争いで敗北した陣営は、CDとの互換性にこだわった方だった。


ほかにも、Blu-ray DiscHD DVDに劣る部分があった。今もあるだろう。しかし、そのような課題は、きちんと取り組めば解決できることが多い。特に技術的なものは、時間とコストさえかければ、必ず解決できる。実際に、解決したというニュースをよく見かける。
「充分よい」は充分ではないのだ。