自転車の歩道通行を可能にする法改正案

自転車は、歩道を通行してはならない、と法律で決まっている。
自転車の歩道通行は、歩行者にとっては脅威だ。その上、ベルをチンとか鳴らす。声をかければ聞こえるのに。人に対する態度か、それが。
だいたい、歩道は自転車が走るところじゃねーんだ。


ところが、歩道を自転車が走るところにする法改正案があるらしい。


疋田メルマガから、現状を簡単に簡単にまとめると、警察庁は、自動車の車道における制限速度を引き上げようとしている。そこで邪魔になる自転車を歩道に上げようとしているのだ。
ところが現在の統計では自転車の事故は出会い頭の衝突が多い。つまり歩道を走行していた自転車が車道を横断する時に自動車と衝突するのだ。もちろん歩道の歩行者は自転車に脅かされている。

普通に考えるならば、自転車を車道オンリーにしてもおかしくはない状況なのに、逆をやろうとしているのである。

この改正法案の詳細と、パブリックコメントの募集要項は以下のPDFファイル。


「道路交通法改正試案」に対する意見の募集について(PDFファイル)


パブリックコメントの募集は1月28日までで、なんとなくためらっている内に、このエントリを読んでもらっても既に間に合わなくなってしまった。私自身は、パブリックコメントを提出したが、それを人に勧めるかどうかはためらうものがあった。が、パブリックコメントを提出するかどうかは、読者が好きにすればいい話なので、とりあえず情報提供でもするべきだった。


ためらっていた内容は、極東ブログに書かれていたものに似ている(引用中の強調は、引用者による)。


老人がふらふら歩いていて幼児にぶつかって怪我を負わす自転車事故と、その老人が車道で事故る自動車事故と、どっちか選択、という判断を公的にするなら、自転車事故が軽視されるのはしかたないのだろう。それに、日本はさらに自動車社会にしなければならない圧力がある。
かなり逡巡する。
パブリックコメントは私は取り敢えず控えることにする。問題の構図がよくわからないのと、重症事故と軽傷事故では後者を選ぶしかないかという暫定的な私の判断からだ。ただ、正直言ってその私の判断を人に勧めることはできない。

冒頭の「老人がふらふらと歩いて」は、自転車をふらふら運転している状態のことだろう。そんな人が自転車を運転するべきではないと思うが、重傷よりは軽傷の方がましだろうという考えに異論はない。一方で、自転車の安全を確保するために、歩行者の安全を犠牲にする、という安易な方策も受け入れがたい。
そんなようなことを、パブリックコメントとして提出した。以下、その内容。


「3 自転車利用者対策の推進」について。


そこで、自転車の通行区分について、車道通行の原則を維持しつつ、道路標識等により普通自転車歩道通行可の規制がなされている場合のほか、児童(6歳以上13歳未満の者)・幼児(6歳未満の者)が普通自転車を運転する場合、車道を通行することが危険である場合等と、普通自転車が例外的に歩道を通行することができる場合の要件を法律で明確に定めることとします。

これは、自転車の安全を確保するために、歩行者の安全を犠牲にすることに他なりません。
交通弱者を優先する原則から見ても、ありえない試案です。

自転車は車両であり、ならば必要とされることは、車道を安全に通行できるようにする施策です。例えば、

  • 路上駐車車両を避けるために車道の中央に出ざるを得ない状況を排除するための、違法駐車車両の根絶。
  • 自転車が安全に通行できる、車線などの整備。
  • 交通弱者を優先する原則の周知徹底。
  • 自転車運転者への、道路交通法の周知。最低限、原動機付き自転車免許が取れる程度の知識。

などなど、容易とは言い難いかもしれませんが、実現の難易度よりも、「どうあるべきか」が優先されるべきです。
「どうあるべきか」を最優先として、実現可能な施策を探るべきではないでしょうか。

安易な法改正によって歩行者の安全を脅かすことのないよう、強く要望いたします。

慌てて書いたので、挙げた代案が適切かどうかは、判断に苦しむ。
とはいえ、自転車が車道を安全に通行できるようにする施策こそが、必要なのだと思う。