『es』

そこらへんにいる普通の人達を、囚人役と看守役に分けて、模擬刑務所でその役割を演じさせたらどうなるか、という実際に行われた実験を元にしたフィクション。


もっとドキュメントタッチの映画なのかと思ったら、いかにもフィクションくさい物語が展開する、後半なんてアクション映画である。前半の、サイコサスペンス風の重苦しい雰囲気は、きれいさっぱり消え失せてしまう。
取って付けたような恋人も、そこだけきれいに切り取れそうな具合。
カタルシスがほしかったのだろうか。こういった映画には、別に必要ないと思うんだけど。


この実験は「スタンフォード監獄実験」と呼ばれ、心理学の教科書に必ず載っているほど、有名らしい。
いくつかサイトを見つけたので、メモしておこう。

//ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%83%89%E7%9B%A3%E7%8D%84%E5%AE%9F%E9%A8%93">スタンフォード監獄実験:Wikipedia
//www.prisonexp.org/slide-1.htm">The Stanford Prison Experiment; A Simulation Study of the Psychology of Imprisonment:実験の指導をした、心理学者フィリップ・ジンバルドー氏のレポート。
//www.aliceinwonderland.com/misa/stanford_prison_experiment/">Stanford_Prison_Experiment:上記 "The Stanford Prison Experiment: A Simulation Study of the Psychology of Imprisonment" の和訳付き。
//www.oira.jp/hp_film/contents/es.htm">es〔エス〕 実験と映画との径庭 学問と善悪の彼岸:上記 Stanford_Prison_Experiment より、もっとかいつまんだ和訳。


WikiPediaと、最後に挙げた「かいつまんだ和訳」あたりを読むと、大まかに実際の状況が分かる。
ジンバルドー氏自身のレポートを読むと、拘束→ミランダ宣言→連行……と、『es』で描かれたよりも前の手順から実験に入っていたようだ。


普通の、善良な人であっても、適切な訓練や監視もなく権力を与えられると、強圧的になってしまうのだな。
ジンバルドー氏が「適切な監視」役だったのだろうが、彼自身を監視する役がいなかった。
それで実験は暴走したのだろう。