作品の評論

「漫画がいろいろ紹介されている」と聞いて、ある雑誌を買ってみた。そして、あんまりいい印象を持たなかった。
たぶん、作品の感想や紹介でなくて、評論になっているところが気に入らないんだと思う。


第一に、評論というのは、作者の言うこと──すなわち作品より、評論者の言うことの方が正しい、という前提で成り立つ。
そういうことも多いだろうが、そうでないことも多いだろう。無条件に前提とすることはできない。
言い換えると、評論者より作品の方が正しいなら、評論は成立しない。


第二に、評論というのは、評論者の解釈を正しいものとして、議論が展開される。
ところが、万人にとっての「正しい解釈」は、存在しない。
作品というものは、作者と受け手の思惑から独立して、それ自体で成り立っている。したがって、作品の解釈は、たとえ原作者がその意図を言葉にしたとしても、万人に正しいものにはならない*1
百者百様の解釈があって、各々つきあわせれば矛盾するだろうが、すべてが正しい。作品が表現しているものは、受け手が受け取ったものでしかない。 「正しい解釈」は、作品と受け手の1対1間のみで、成立する。
だから、解釈自体が議論の対象になる。その議論で、ある程度のコンセンサスがとれることもあるだろう。
しかし、評論で必須となる、ある特定の解釈が「正しい」という前提は、成立しない。そういうあやふやな土台で展開される議論は、作品に関係あるのだろうか。


そんなわけで、作品の評論はまじめに読む気がしない。

*1:もちろん、原作者の言葉に、非常に説得力があることは確か。私だって、こんなことを書きながらも、無批判に受け入れる場合も多い。納得しない場合もあるが。