「60年目の終戦」

メールマガジン『Japan Mail Media (JMM)』は、既成のメディアに苛立ちを感じた村上龍氏が1999年から始めた「新しいメディアの実験」。
メールマガジンなんて、RSSって何?という世界で、もう「新しいメディア」ではない。過去に配信された内容も公開されておらず、当たり前だが無断転載も禁止なので、内容を紹介したくてもできないという歯がゆさ。
有用なメールが届かなくて、メーラーを立ち上げておくことを忘れがちな昨今、それでもおもしろい記事があるので、読んでいる。




サンタクロースっているんでしょうか?

サンタクロースって

いるんでしょうか?

お気に入りは、国連・化学兵器禁止機関 (OPCW) 訓練人材開発部長の春具(はる えれ)氏の記事『オランダ・ハーグより』。
昨年のクリスマスあたりに配信された「クリスマス・イブ物語」は、『サンタクロースっているんでしょうか?』にまつわる話。いたく感動した私は、娘が生まれたばかりの弟に全文転送した。
これがwebで公開されているなら、リンクして、ここで何か書こうかと思ったのだけど、それは叶わない。現状、著作権法で認められているのは引用であるが、一部分だけ引用しても、今ひとつかと思ったので、結局何もしないことにした。


そして、今週の『オランダ・ハーグより』は「60年目の終戦」。
こちらは引用で済みそうなので、気に入った部分を引用しておく。


 戦争が終わって60年も経つと、ひとびとの反応も様々であります。そのあいだに世界は大きく入り組む構造になっていった。かつての敵も味方も交差している。

 わたくしのかつての同僚で、最近までアナン事務総長のもとでアフリカ問題を担当していた事務次長補にエリザベス・リンデンマイヤー氏という女性がおります。父親はフランスの軍人で、彼女は父君の駐屯していた北アフリカの生まれである。そしておなじオフィスにもうひとり、さきほどの上司とは別のドイツ人がおりましたが、彼はヒトラー・ユーゲント北アフリカにいた。そして、話を聞いてみると彼女の父君の仏軍とドイツ軍は実際に砲火を交えていたということであります。

「あのときは君のお父さんの軍に撃たれてほんとうに死ぬかと思ったよ」「父は敵の抵抗が半端じゃないと言っていたわ」などという話をおなじオフィスで聞きながら、わたくしはめくるめく感慨にとらわれたことを思い出す。昨日まで敵同士だったのがいまは机を並べながら、国連憲章という理想をめざして協力している。こいつはおもしろい職場に来たなあ、とほんとうに思ったのであります。わたくしはけっして理想主義者ではないが、こういう話にはけっこう簡単に感動してしまう。