『ウェブ時代をゆく』(梅田望夫)



ウェブ時代をゆく

ウェブ時代をゆく

梅田望夫

感想でもないし考察でもないのだけど、この本を読み終えて、自分は何か書かなければならないと思った。そこで、ひとつサンプルを提示することにした。自分の人生の点検も兼ねて。
梅田氏の想定する「けものみち」とはおそらく違うのだろうが、だから。


好きなこと。
音楽を聴くこと、小説を読むこと、漫画を読むこと、映画などの映像作品を観ること、興味深い言葉に触れること、ソフトウェアを書くこと。
このうち、金になりそうなのはソフトウェアを書くこと。しかし、「人生をうずめる」ほど好きでもない。仕事でソフトウェアを書くので、休日は別の好きなことをする。
ソフトウェアを書くのは好きだが、書きたいものが無いのだ。「こういうソフト無いかな」と思って、ネットを探しても見つからないときに、ようやく書き始める。時かけクロックスクリーンセーバーは、そんな風にして書き上げた。書き出せば、他の好きなことは放り出すんだけど。


さあ来年は何を始めようか。そう考えるのではなく「何をやめるか」を先に決めよう。それも自分にとってかなり重要な何かを「やめること」。
それが「来年の抱負」「今年の抱負」を真に意味のあるものにするための最重要ポイントだと思う。新しく始める「何か」を決めるだけでは、できない場合がほとんどだ。
「時間の使い方の優先順位」を変えないと、新しいことを始める時間はなかなか捻出できない。とにかく「やめること」を決めなくちゃいけない。

「好きなこと」はどれもやめられない。これをやめたら、私は枯れてしまう。
好きではないが重要なことからやめるしかないのだろう。


苦手なこと。
努力すること、知らない人と会話すること、管理すること。
苦手なことは、できるだけやりたくない。
学生時代の経験から、管理にはまったく向いていないことがわかっている。だから、昇進を求められる環境には、身を置きたくない。
知らない人と会話することは、難しい。ある程度知った人になると、仲良くなったりする。だから、新しい職場では、人を知ろうとするし、知ってもらおうとする。人と仲良くしたくないわけではないのだ。
管理と知らない人との会話が難しいのだから、独立して経営や営業など、やりたいとも思わない。
努力はできない。だから、好きなことを仕事にした。好きなことなら、人からは努力しているように見えても、自分にとってはそうではないから。プログラミングの本やweb記事を読んで、「その手があったか! すげー」とか興奮したりするのだ。




Modern C++ Design

Modern C++ Design

アンドレイ・アレキサンドレスク

「すごいプログラマ」になりたいとは思う。ただ、『Modern C++ Design』を読んで、興奮するのと同時に、必要なのは知識ではなく発想力であると痛感した。私には、そういうものが決定的に欠けている。学習の高速道路の先にある大渋滞を抜けることができないのだ。


私は、派遣会社の社員で、技術者として派遣されて仕事をしている。新卒で、正直言って、上記のようなことはろくに考えずに就職したのだが、最近は自分にあっていると思うようになった。NTT DATAの最終面接に通ったりしていたら、今頃哀しいことになっていたかもしれない。
主に要求されるのは、技術力と、派遣先の人とうまくやっていく能力。後者は、まあつまり、仕事仲間と仲良くやっていく能力で、仕事をするなら通常は必要なもの。
正社員ではあるが、技術者である限りは、普通の昇進は無い。技術者としての評価と勤続年数(!)によって、給料が上がる。
派遣のイメージが悪くなるような事件もいろいろ起こっているが、身の回りでは聞いたことがない。


新卒だったからだろうが、最初の派遣先では、単なる実験要員だった。ソフトウェアエンジニアの仕事を希望したのだが、卒業した学科を見たのか、電気の仕事だった。
「ここにいたら自分はエンジニアとしてやっていけなくなる」と思った。派遣先を変えてもらうことも難しそうだった。
だから転職活動をし、辞職の意志を伝えた。
そこで引き留められ、希望する職種への異動という条件で、留まった。以来、技術力の向上はやりやすくなった。飯を食うためには、まず技術。会社に依存しないですむように。
今のところ大きな不満はないが、私も世の中も会社も派遣先も変化する。危機感は常に持っている。どんな仕事に就いていようが、持っているべきだと思う。40歳でリストラされて、「この年で採ってくれるようなところなんて無いですよ」なんて言うおっさんは、自業自得だと思う。自分でそういう40歳になったんだろう。
状況は注視しておいて、折り合わなくなってくれば、またなんらかの行動が必要になるだろう。
確かに、「ある程度の経済的余裕」は欲しい。これまで書いてきた買い物ができる程度の収入があるといい。
だが、収入に合わせて生活を変えても、結構やっていけるような気もする。とりあえず、飯が食えて、本やCDやDVDが買えればいい。CDやDVDはレンタルでもいいか。音楽や映像やネットに触れるための道具は、もう持ってる。


ウェブ時代をゆく』は、以下の層に向けて書かれている。


この本は、生まれたからには何かしたいという思いを持ち、仕事を通して自己実現を求めている層を念頭に書かれています。

でも、若い人にはターゲットの層でなくても読んでもらいたいと思う。職種や業種は関係ない。昔からある仕事でも、webによって変わらざるを得ない。
提示されたものを、すべて受け入れて欲しいというわけではない。「別の生き方もある」と思うなら、それでもいいだろう。
ただ、自分がどんな時代に生きているのか。そして、これから生きていくのかは、知っておいた方がいいだろう。