「役不足」

先日、書店でもらってきたしおりにこう書いてあった。


この言い方は、間違い?

役不足ではありますが、精一杯がんばります。」

裏返すと、どうやら「明鏡国語辞典」という辞書の広告である。こう書いてある。


やく−ぶそく【役不足】[名・形動]その人の力量に比べて与えられた役目が軽すぎること。「課長補佐では──の感がある」▽「──ですが一所懸命努めます」などと、自分の力不足・力量不足の意で使うのは誤り。




明鏡 国語辞典

明鏡 国語辞典

まあ、わりと有名な誤用だ。
最近は「役者不足」という言葉も見かけるようになってきた。辞書には載っていないが、使われ続けているうちにそのうち収録されるだろう。こちらは力不足の意味で使われる。


さて、これをふまえた上で最初の問いに戻る。おそらくは「間違い」としたいのだと思われる。
が、その解答は「間違いとはいえない」となる。こういう意味にもとれるからだ。


「与えられた仕事は超楽勝で、私がやってたら給料泥棒のそしりを免れないこと請け合いですが、『獅子は兎を倒すにも全力を尽くす』の喩えの通り、精一杯がんばります」


こんなことを言った人がその後どうなるかという問題はあるが、それは国語の問題ではない。
辞書の定義文は悪くないのに。