「北朝鮮」という呼称

ぜんぜん知らなかったのだが、朝鮮民主主義人民共和国は「北朝鮮」という呼称を好ましく思っていないらしい。


森達也さんの世界が完全に思考停止する前に国連総会で北朝鮮の代表が日本を「ジャップ」と呼んだ事件にからめて、この問題が取りあげられていて、ドキっとした。日本が北朝鮮と呼ぶことと、北朝鮮がジャップと呼ぶことが、「相手国がいやがる呼び方を公の場で使用する」という観点に立つと同等ではないかと言う問題提起である。

同等かどうかというのとは別に、相手が嫌がることをやることはないんではないか。
彼らは日本人を拉致したり、嘘をついたりと、それはそれはひどいことをしている。しかし、「なにをされたか」というのと「なにをするか」というのは、裁判でさえ考慮されるが、実は全然関係のないことである。相手の卑しい行為に呼応して、自分まで卑しくなることはないのだ。


「ジャップ」というのは、国際的に認知された蔑称であるらしい。自分が「ジャップ」と呼ばれたら、いい気はしないだろう。それは、「ジャップ」が蔑称であることを知っているからであり、呼ぶ側に蔑む気持ちがあることが分かるからである。
北朝鮮」という呼称には、蔑む気持ちは込められていない。では、蔑む気持ちがなければいいのか。
なんでもいいから、なにかイヤな名前で呼ばれたとする。相手に「その呼び方はこういう理由でイヤだからやめてくれ」と伝える。相手は「いやそんなつもりはないんだ」と言う。そしてさらに、「だからこの呼び方を使わせてもらう」と言う。
こんなことは、普通は考えられない。
北朝鮮」と呼ぶことは、そういう、普通では考えられないことなんではないか。