映画『スカイ・クロラ』


おもしろかった。
あのナレーションは要らないんじゃないか、というかナレーションにするならストーリーで表現して欲しいと思ったが、あとは楽しめた。
空が美しい。音も豊か。音がいいとなれば、THXシアターで観てみたくなるのだけど、どこかあるだろうか。
プッシャの戦闘機の空中戦があるんだろうと思い、『王立宇宙軍』みたいなんだろうかと思っていたが、そのような雰囲気はなく、ダンスをしているような描写が美しかった。
(以降、原作と映画のネタバレに関して、あんまり考慮しないで書きます。具体的に書くのは避けますが、読んでしまうといろいろと勘づくことが多いでしょう)


押井守氏が『スカイ・クロラ』を映画化すると聞いて、森博嗣氏の原作を読んでおいたのだけど、おかげで分かりやすかった。頭の回転が鈍いので、ストーリーを追いつつ解釈も、というのはなかなか大変。
また、小説なら1秒を1ページかけて表現できるが、映像だとなかなかそうはいかない。空中戦の知識がないので、ストールターンを見ても何をしたのか分からなかっただろう。
原作は、発表順に『スカイ・クロラ』、『ナ・バ・テア』、『ダウン・ツ・ヘヴン』、『フラッタ・リンツ・ライフ』、『クレィドゥ・ザ・スカイ』、『スカイ・イクリプス』(未読)だが、最初に発表された『スカイ・クロラ』が完結編。
6冊の話を2時間にまとめてあるのだけど、このまとめ方になるほどと思った。そう、誰が誰でもいいのだ。


スカイ・イクリプス』が未読なのではっきりとは言えないが、原作では、生と死と忘却が果てしなく続く印象だった。わずかな綻びも自然に繕われて、またいつもの日常に戻ってしまう。その綻びを描いたのが、このシリーズであり、完結編の『スカイ・クロラ』で、それは繕われてしまっている。
映画は、その繕いがなかった。ただそれは、エンドロールの後に表現されていることから、「こういう『その後』もありうる」ということなのかも知れない。


もう一度くらい劇場で観てみたいな。
「ああ、それで水素はマッチの燃えかすをじっと見ていたのか」と後から気づくこともあり、やはり見逃しも多そうだ。なにより、あの美しい映像と音をまた体験したい。自宅で劇場の音響を再現するのは、むずかしいしね。