『攻殻機動隊2.0』


よかったところを挙げてみよう。
榊原良子氏の演ずる人形使い。これは大きい。つまり人形使いが女性になっているわけで、意味合いが変わってくる。また、個人的に、田中敦子氏と榊原良子氏にはイメージが重なるところがあり、「私たちは似たもの同士」のあたりなどは、印象深かった。
ネットは広大だわ」からの都市の描写。
映像全体がCGで構成されていて、素子が映っていないシーン。
そのくらい。
あと、初めて映画館で観られたのは、よかったと思う。


プログラマの感覚からすると、「1.5」あたりが妥当なバージョン番号ではないかな。
バージョンアップの作業途中、という印象だった。1.0から2.0への新メジャーバージョン開発途中で、敢えてバージョン番号をつけるなら1.5だけど、作業中なのであちこちがちぐはぐですよ、という感じ。
3DCGが浮いてたり、シーンの切り替わりでまるで絵の印象が変わったり。
それから、いかにもCGな素子。フルCGの人体は、ゲームでは当たり前になされており、それほどおかしな感じはないのだが、アニメとゲームでは技術の交流がないのだろうか。
オリジナルの『攻殻機動隊』に対して、現在の技術を用いてできることを全てやった、という感じではない。『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』のような「リビルド」を期待すると、残念な思いをする。
「やりきった」ものを観たい気もするが、そういう企画がそもそもなさそうだし、あっても通るのか、公開されたとして、それにまた1800円を払う気になるのか、と考えると、どうだろう。観てしまいそうだけど。

『はるかな響き Ein leiser Tone』(飛浩隆(とび・ひろたか))


冒頭、アーサー・C・クラークのもっとも有名な小説を思い出したのだが、読み進めていくうちに、これはスタンリー・キューブリックだと思った。
あの音が頭の中で鳴り響く。曙光差す、あの荒野が目に浮かぶ。


人が、ものを見て、それを言葉にする過程で抽象化が起こる。
例えば、眼鏡を見たなら、レンズがありフレームがありパッドがあるという知識とともに、「眼鏡」という言葉を認識する。その認識をした時点で、眼前にある眼鏡は曖昧な形で認識される。
言葉によってコミュニケーションの効率は飛躍的に向上した。一方で、言葉以前の認識を失ったともいえる。「天才」と呼ばれる人は、そのような認識を維持してるとも聞くけど、そのあたりはよく分からない。
なんてなことを思いながら読んだ。


TORNADO BASEのanswer songsで読める、飛浩隆氏の短編。なるほど、アンサーソング
飛氏の作品を読んだのは、これが初めて。
"Ein leiser Tone"はドイツ語で、英語にすると"A quieter Tone"*1。実は「はるかな響き」と、ちょっと意味が違う。とはいえ、「はるか」でもあり「かすか」でもある。


ところで、これはいつまで無料で公開されているんだろうね。
教えてもらって、というか人が紹介してるのを勝手に読んで、直接見に行ったので、よく分からない。
プロの作家が、これだけのクオリティのものを、ずっと無料で公開し続ける、ということがないとは思わないが、サイトはちょっと商業的な雰囲気がある。「単行本8月末発売予定」とあるので、その頃には読めなくなるのかもしれない。

*1:なんで日本語にしないかって、Google翻訳にかけたら、「静かな口調で」とか訳されちゃって、なんか違うんじゃねーかなと。あんまり離れた言語にすると、意味がずれてくるのだろう。

『月周回衛星「かぐや」が見た月と地球』



『月と地球』

月周回衛星「かぐや」が見た

月と地球

地球の出そして地球の入り

月衛星「かぐや」に搭載されたハイビジョンカメラの映像がBDに収録されて発売された。
「売るのかよ」とか、まあいろいろ議論もあったりしたのだけど、やっぱりまんまと買わされてしまうのだよ。
映像なら、NHKの「かぐやアーカイブ」で公開されているのだけど、解像度が1280x720で、ビットレートが2Mbps。
もともとの映像がフルHDで、1920x1080。レビューを見ると、ビットレートは25〜40Mbps超とのこと。
それが見られるってなら、見たいじゃないですか。


映像はとても美しい。
輪郭が非常に精細で、ちょっとCGぽくも見える。空気でかすむことがないと、こんな感じなのだな。例えば、先日打ち上げられた「きぼう」の写真でも同様。
ちょっと、というか、かなり残念なのは、せっかくのフルHDなのに、その一部を拡大した映像が多かったこと。巨大なモスキートノイズがうねうねしていて、まぁ、科学的には興味深いのだろうけど、きたない。フルHDそのままを表示していたのは、全編の半分にも満たなかったように思う。
愛知万博にNHKが展示していたスーパーハイビジョンでも感じたのだけど、NHKはせっかくの性能を生かすのがへたくそな印象がある。


その、あんまりないフルHDそのままの映像として、「地球の出」と「地球の入り」が本編と特典映像の両方に入っている。
映像自体は、同じ、なのかな。しっかり見比べてないけど。
BGMが違っていて、特典映像の地球の出はパッヘルベルの「カノン」が、実にいい感じだった。
本編の地球の入りのBGMは、「遠き山に日は落ちて」だった。いや、日じゃなくて地球だから。

『プラネタリウムを作りました。』(大平貴之)



『プラネタリウムを作りました。』

プラネタリウムを作りました。

大平貴之

世界一のプラネタリウムメガスター」を個人で作った、大平貴之氏の半生記。
「世界一」というのは、「個人で作られたものとしては」ではなく、五藤光学ミノルタプラネタリウム(現コニカミノルタプラネタリウム)カールツァイスなどのメーカーの製品も含めてのこと。当時、最上位機種でも星は2〜3万個しか投影しなかったところ、ぶっちぎりの170万個の投影数であった。


メガスターが投影できるもっとも暗い星が、11等星。原板に開けられたパターンの大きさにすると、直径が0.001mm(1μm)になる。
ピンと来ないと思うので、IntelのCPUと比較してみよう。
平氏メガスターの構想を持ったのは、1995年。Pentiumの第二世代が発売された年。この回路パターンの配線幅(プロセスルール)が0.6μm。1993年に発売された初代Pentiumで0.8μm。
このパターンを焼き付けるのに、Intelは億単位の価格で売られている機械を使っている。2倍近いサイズとはいえ、個人でできるものだとは、とても考えられないだろう。
平氏はそれを実現した。自室の7畳間にクリーンルームを作り、自動でパターンを照射していくスーパーマイクロプロッターまで開発してしまった。
「好きを貫く」というのは、こういうことなのだろう。


1996年、大平氏は大阪で開催された国際プラネタリウム協会の大会に、初めて参加。当時稼働していた、メガスターの前世代機、アストロライナーについて発表した。
その最後に、こう言ったそうだ「これは私の趣味です」。企業ではなく個人が開発したものですよ、という程度の意味だったそうだが、リーナス・トーバルズの『それがぼくには楽しかったから』を思い出さずにはいられない。


この本を読んでいて、少し残念だったのは、技術的にはあまり深入りしていないところ。
原板のマスクはどうなるんだろう、と思って読み進んでいたのだが、いつのまにやら解決していたりして。
いや、そういう本じゃないってのはわかってるし、技術的な話を始めると止まらないんじゃないかと思ったりもするのだけどね。


現在は、410万個の投影数を持つメガスターIIが、日本科学未来館と、大平氏の地元である川崎青少年科学館で常設展示されている。
メガスターを初めて見たのは、日本科学未来館のエアドームでの展示だったが、あの頃、乱視持ちのくせに眼鏡もコンタクトも持っておらず、もったいないことをしてしまった。また見に行こう。




『ギガスターの産声』

ギガスターの産声

大平貴之

さらに、2002年4月1日にはギガスターの完成が発表された。4月1日といえば、ネットのあちこちでこのような記事があるものだが、とりあえず、17等星までが投影できるという点だけに着目してみよう。メガスターの仕様のまま、投影できる星だけを増やすという方向で、実現可能性を考えてみる。
17等星は、11等星の約0.004倍の明るさである。つまり、パターンの面積を0.004倍にすればいい。直径にすると、その平方根で約0.063倍だ。したがって、パターンの直径は0.063μm(63nm)。
またIntelのCPUを引き合いに出すが、現在最新のプロセッサのプロセスルールが45nm。
平氏なら、やってしまいそうな気がするね。

ロケットまつり at 阿佐ヶ谷ロフトA



昭和のロケット屋さん

昭和のロケット屋さん

ロケットまつり@ロフトプラスワン

ロケットまつり」というのは、松浦晋也氏、浅利義遠(あさりよしとお)氏、笹本祐一氏が聞き手となり、日本のロケットの現場にいた方々に話を聞くというイベント。
もともとは、ロケット打ち上げなどの現場に取材に行った三氏が、それを伝えるというものだったらしい。しかしやはり、現場の人に直接お話いただく方が、得るものが大きいのではないかということで、いまの形になった。
と、『昭和のロケット屋さん』のまえがきに笹本祐一氏が記していた。ロケットまつりについては、松浦晋也氏のブログ「松浦晋也のL/D」で知ってはいたのだが、本を読んでから「これは行ってみたいな」と思っていた。
昨日、初めてその「ロケットまつり」に行ってきた。


場所は阿佐ヶ谷ロフトA。ゲストは、富士精密でペンシルロケットからのロケット開発に従事した垣見恒男氏と、その元同僚である永岡忠彦氏。聞き手は松浦晋也氏。リンク先のコメントをご覧になると分かるように、浅利義遠氏は欠席。


スタートの19:00に少し遅れて会場に入ったら、ロケットの資料を入手するために実行された、あの手この手が語られていた。聞いてると、垣見氏はけっこうな悪党である。パトレイバーでいえば後藤隊長だろうか。話もおもしろくて引き込まれる。
垣見恒男氏「この話、したことあるね」
松浦晋也氏「いや、ないないない」
すでに20回以上開催されているロケットまつりだが、まだまだ語られてないことがあるらしい。松浦氏も初耳のようだ。『昭和のロケット屋さん』に、「この人達はいろんなこと訊いてくる」というようなことが書かれていたが、想像もしてないことはやっぱり訊けないわけだ。
だから、こうやって語っていただけるというのは、まったくありがたい話。すごくおもしろく、非常に興味深い。
でも、語られた内容については、あんまり書かない方がいいのかな。本になったりもするしな。いろいろメモしたんだけど。


20:30からの15分休憩に、『昭和のロケット屋さん』を編集された今村さん(id:Imamura)にご挨拶、したらそのままステージに行って営業なさってた。
うん。これはおもしろい本なので、ロケットに興味のある方は買うといいよ。




われらの有人宇宙船

われらの有人宇宙船

日本独自の宇宙輸送システム「ふじ」

松浦晋也

後半に入ってから聞き入っていると、あっという間に終了の22:00。
と思ったら、ちょっと趣を変えて延長。ここで、ずっと気になってたことを質問。
『われらの有人宇宙船』で提示された、日本独自の宇宙輸送システム「ふじ」構想。松浦氏も参加し、旧NASDAで実際に検討された構想である。ロケット開発には多かれ少なかれ「賭け」の要素があるものだが、「ふじ」はその賭けの要素が少なく、現実的なプランであると思った。これがどうなったのか。
ずいぶんがんばって動いて、実現の可能性は結構あったらしいのだが、有人計画は10年やらないというあの決定で頓挫してしまったらしい。って、いま検索してみたら、そのようなことがほのめかされているなぁ。ちなみに松浦氏のブログには出版社在庫がなくなったとありますが、ふつうにAmazonで売ってます。流通在庫はまだあるらしい。
現実を聞いてるとけっこう暗くなってしまって、松浦氏はよく「もっと明るい話しましょうよ」と言われるらしい。そうだね。じゃあこの現状をどうするかと考えた方がいいんだろうね。


終電に間に合わなくなるので、後ろ髪引かれる思いで途中で出た。
いや、おもしろかった。
次回は新宿ロフトプラスワンで6月28日にあるらしい。これは行かねばな。

Mitaka


Mitaka は、 国立天文台 4次元デジタル宇宙プロジェクトで開発している、 天文学の様々な観測データや理論的モデルを見るためのソフトウェアです。 地球から宇宙の大規模構造までを自由に移動して、 宇宙の様々な構造や天体の位置を見ることができます。

Windowsアプリケーションだが、ソースが公開されていて、カスタマイズや移植している人もいる。Miataka Plusは、Macintoshでも使える。
大分前に教えてもらったのだけど、そのときのPCはAthlon XPで重くてうまく動かなかった。この度、新しくPCを組んだので、改めてインストール。


や、これはすごい。
天体を立体的に見られて、ぐりぐり動かすことができる。時間経過もシミュレーションできる。
説明よりも動画を観てもらった方が早い。



以前、こんな動画を貼った。


肉眼で見える星空から、強力な望遠鏡による星雲内部の写真を、デジタル処理でシームレスにズームインする動画にしたもの。スペイン南部Calar Alto Observatory付近の星空から、はくちょう座を通り抜け、ペリカン星雲の頭部まで。

この逆で、シンプルに地球からずーっと観測限界までズームアウトするのが、結構いい。



地球が「奇跡の星」だってのが、全然大袈裟でなく感じられて、なんか泣けてくる。

Flickrとはてなフォトライフ・アゲインその2

あー、ダメだ。


フォトライフ、悪くないね。Flickrよりも安いし。一ヶ月に3Gbytesもアップロードできれば充分かも。 Flickrの契約が切れる頃に、移行を考えようかな。

って書いたけど、アップローダがしょぼすぎる。
webからのアップロードが、Flickr Uploaderより多機能かつ使いやすいならいいけど、そういうこともない。ローカルアプリケーションよりwebのインターフェイスの方が優れてるなんて、なかなかない。
あと、フォトライフは不安定。これだけ頻繁に障害情報が出てると、ちょっと考えもの。